2020年08月23日
イライラして眠れないときに 睡眠の質を高めるセルフケア③
こんにちは! 治療室キノワの佐藤緑です。
前回は安眠につながる睡眠環境をご紹介しました。
★安眠につながる睡眠環境
①コーヒーなどのカフェイン入りの飲み物は午後2時迄にする
②寝る前にエアコンで室内を快適な温度に調整
③寝る前は携帯やテレビ等を見ない
④朝は早く起きて充分に朝日を浴びること
最近睡眠不足という友人がいましたので、上記の方法を試してみてとお勧めしました。友人は4~5日続けてみたところ、熟睡感が格段にアップ!前日の疲れも取れてフットワークがさらに軽くなったと言っていました! 最近眠りが浅くなっている方は、ぜひ睡眠環境を見直してみてくださいね。
東洋医学で「不眠」とは
さて今回は、東洋医学では「不眠」をどうとらえているのか、さらにストレスが原因で眠れないときにおススメのツボをご紹介します。
紀元前200年頃に書かれた中国伝統医学における三大古典のひとつ「黄帝内経(こうていだいけい)」の中に「目不瞑(もくふめい)」「不得眠(ふとくみん)」「不得臥(ふとくが)」という言葉がみられ、それが現在の「不眠」にあたるとされています。眠れない苦しさは、太古の昔から共通した人々の深い悩みだったんですね。
東洋医学で「不眠」を考えるとき、五臓(肝・心・脾・肺・腎)の働きをベースに根本的な原因をさぐっていきます。その中で今回ご紹介する「ストレスが原因の不眠」は「肝」の働きが関係しています。
不眠と「肝」の関係
東洋医学から見た肝の働き
なぜ、睡眠に肝が関係してくるのか、それにはまず東洋医学から見た肝の働きを知る必要があります。肝には疎泄と蔵血の働きがあります。
(疎泄)気や血を身体の隅々まで巡らせるコントロールをする
(蔵血)血を貯めたり、血の量の調節をする
例えば「今日はなんだか気分がいい」という時は、肝が順調に働いて気と血が体のすみずみまで行きわたっている状態です。逆に「なんとなく気分が乗らないなあ、気が重いなあ」というときは、肝の働きが低下して気血の流れが滞っているサインです。
またイライラや怒りなどの感情が強いときは肝の気の流れが滞り、余分な熱が生まれ、その熱が上昇し頭痛、眩暈、目の充血などを引き起こしてしまいます。その熱を「肝火」、上昇した状態を「肝火上炎」と言います。
肝火による不眠とは
「肝火」をひと言でいうと、イライラや不満を心にぐっと抑え込んで頭に血がのぼった状態です。考え事が頭から離れず、眠ろうとすればするほど目がさえて嫌なことばかり心に浮かんでくる・・・ こんな経験はありませんか?これがまさに「肝火による不眠」の状態です。
肝火による不眠の症状
肝の働きが低下して巡りが悪くなった気や血は熱を帯び、まさにカッカした興奮状態になります。交感神経は緩みにくく戦闘モードにあるので、頭はさえて目が充血。血圧や体温も高いままで胃腸の働きが低下します。
眠れなかった朝、鏡をみると顔色が悪く目が血走っている。胃が重くて口の中も苦い。頭痛やめまい、耳鳴りもある。疲れがまったく取れず体が鉛のように重い。喉がつかえたような感じがする。肩こりや腰痛を強く感じる。
鏡で舌をみると、表面が黄色っぽい苔に覆われている。 これらはすべて「肝火」が原因の不眠の際に、併せて現れやすい症状です。
肝火による不眠におすすめのツボ刺激
「肝」にかかわる経絡「足の厥陰肝経」は、足の親指の外側からスタートし、内くるぶしの前、太ももの内側をのぼっていきます。そして生殖器や肝、季肋(横隔膜)、食道、咽頭、眼につらなったあと、頭頂部にあるツボ「百会」にも通じているのが特徴です。肝火による不眠のときは、この経絡に関わる部位を刺激します。
①百会を爪楊枝でトントン
百会は頭のてっぺんにあるツボです。正確には、両耳を前に折り曲げたときの耳の頂点を結び、眉間の中心から頭頂部に向けたラインが交わるところにあります。 施術前に行うカウンセリングで睡眠に関するお悩みがある方には、実際にこの百会を治療に使うことが多いんですよ。
セルフケアでは、ここを指でイタ気持ちいい力加減で押したり、爪楊枝を束ねたものを鍼の代わりにしてトントンと刺激するのもおススメです。頭がスッとして、こもった熱が抜けていく感じがしますよ。寝る前はもちろん、ちょっと疲れたなと思ったらトントンとやってみてくださいね。
②太ももの内側を下から上にもむ
鍼灸の名人である澤田健に師事した代田文誌の著書「鍼灸真髄」によると『(旅先などで)眠れないときは大腿内側の肝経をもむとよい』と書かれています。両方の親指をそえるようにして、膝の内側(曲げたときにできるシワの端)にあるツボ「曲泉(きょくせん)」から太ももの内側を下から上にゆっくりともんでみましょう。
③肝の熱を冷ます「労宮」と「行間」
手を握ったときに手のひらに中指が当たる場所にあるのが「労宮(ろうきゅう)」というツボ。「行間(こうかん)」は足の第1指と第2指の間のみずかき部分にあるツボです。どちらも肝の熱を冷ます効果がありますので、イライラが強いときはここをギュッと押したり、お灸をしてみましょう。
経絡への刺激は、毎日続けることで体質も変化していきます。ストレスに負けない心と体作りにむけて、今日から小さな一歩を始めてみませんか。
次回は肝火による不眠対策・第二弾。日常生活でのストレス緩和法をご紹介します。